富山大学附属病院 消化器・腫瘍・総合外科(第二外科)

膵臓外科
膵臓外科
教室概要
診療科

膵臓外科

膵臓疾患に対する膵臓手術は年間100件以上行っています。
年間100件以上の膵臓手術は国内では限られた施設しか達成しておらず、北陸では当院のみです。
その実績から、通常では切除が困難である疾患でも、
高度な技術と安全性をもって切除が可能かどうか症例ごとに検討しています。
膵臓疾患でお悩みの方は、一度当院を受診ください。
当科では、膵臓がんおよびあらゆる膵腫瘍(膵のう胞性腫瘍や膵神経内分泌腫瘍など)、急性・慢性膵炎など手術治療を求めて受診される患者様に真摯に向き合い、最善を尽くすべくスタッフ一同診療にあたっています。当科の膵臓がんの治療成績はどこにも引けをとらないと自負しています。一方でそれに満足せず、患者さんにとってもっと良い治療法はないか、何が最善の治療かを日々探求しています。
膵臓がんは難治がんのひとつであり、手術が唯一の根本的な治療ですが、発見された時には進行し、「手が付けられない」ことがしばしばあります。また膵臓は腹腔内の臓器をやしなう大血管に接する体の深部に位置しており、それゆえ膵臓手術には高度な技術を要します。
最先端の膵がん治療
切除が不能と診断された膵臓がんであっても、希望をもって受診される患者様に寄り添い、私たちもあきらめずに治療に当たっています。当センターでは、膵がんに対しては手術だけでなく、化学療法や放射線治療などをうまく組み合わせ(集学的治療)、手術だけに頼る方法よりも良好な成績をあげています。また、標準治療だけでなく、以下のような特殊な治療も行うことができ、多くの治療選択肢があります。
切除不能膵がん
切除不能局所進行膵がんに、化学療法と放射線治療を組み合わせた集学的治療後に手術を行った結果、5年生存率は60%を越えております。(Igarashiら、2022年論文化)
腹腔細胞診陽性の切除不能膵がん
当センターでは通常の画像検査のほか、審査腹腔鏡という全身麻酔での検査を行い、患者さんごとに最適な治療を選択しています。切除可能膵がんでも腹腔細胞診が陽性の場合には手術を行っても予後が悪いことが分かっており、遠隔転移のある切除不能膵がんとして扱います。しかし、全身化学療法を行うこと腹腔細胞診が陰性になり手術ができれば、切除可能膵がんと予後は同等です。 (Fukasawaら、2023年論文化)
腹膜播種を伴う膵がん
腹膜播種を伴う膵がんに対する特殊な治療として、パクリタキセル腹腔内投与の臨床試験(先進医療、無作為化比較試験)を行っています。北陸では当センターのみが本治療を行うことができます。
安全性を徹底した膵臓・胆道手術
センター開設後、積極的かつ専門的な膵切除(膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、膵全摘、血管合併切除など)を行っています。
難易度の高い膵臓・胆道手術のなかでも、膵切除はとりわけ難しい手術でありますが、センター長の藤井教授が開発した新しい膵空腸吻合法:Blumgart変法を導入することで、安全かつ確実な手術を行うことができています。 (Fujiiら、2014年論文化)
2019年以降、毎年100件を 超える膵切除を行なっています。 これは北陸4県で最多です。
最先端の膵/胆管がんの手術方法
門脈合併切除を要する
膵/胆管がん
膵がん・胆管がんが門脈に広く浸潤している場合でも、当センターでは浅大腿静脈という血管グラフトを用いて門脈合併切除再建を行っています。(Shibuyaら、2023年論文化)
動脈合併切除を要する
膵/胆管がん
膵がん・胆管がんが肝動脈などに浸潤している場合でも、当センターでは化学療法と放射線療法を組み合わせた集学的治療を行ったのちに、肝動脈合併切除再建を行っています。
新規胆管空腸吻合法:
T吻合の開発
膵頭十二指腸切除術後の晩期合併症として、胆管空腸吻合部狭窄による胆管炎があります。これを予防するため、吻合径を拡張する新たな吻合方法:T吻合を開発しました。(Kimuraら、2023年論文化)T吻合を行ったグループと従来の吻合法を行ったグループを比較すると、T吻合を行ったグループで術後胆管炎の発症率が有意に減少しました。
傷が小さく、負担の軽い治療
広く大きく切除をすることのみが最善の治療とは限りません。近年は病気の悪性度や進行度に合わせた必要十分な治療についても開発が進んでおり、ロボット支援下膵切除術(ロボット手術)はその代表的なものです。
これまでは病気が進行していなくても、進行がんと同様に上腹部からおへそまで大きく開腹が必要でしたが、病状・病態にあわせてロボット手術を行うことで創部を小さくし、患者様の体の負担を最小限にする手術にも積極的に取り組んでいます。また、体表の創部だけでなく、切除する臓器を最小限にすることも考慮しています。
普段は膵臓と共に切り取られる脾臓を残したり、半分近く切り取られる膵臓の量を1/3程度に抑えることで、将来免疫能が低下したり、糖尿病になったりするリスクを最小限にすることも考慮しています。当センターでは、2020年に北陸初となるダビンチによる膵切除を導入しました。
私たちはこのように積極的に膵臓がんおよび膵疾患の診療にあたっています。またその成績を明確なデータとして世界に示すべく、大学病院などの日本の高次医療施設と共同で多くの臨床研究や臨床試験を行っています。当科の長である藤井努(写真4)は膵癌診療ガイドラインの委員を務めるなど膵臓がん診療のエキスパートです。
このように当科にはこれまで蓄積された知識と技術を最大限に生かし、未知の領域は臨床試験や研究によって明らかにすべく、日々診療と研究に取り組んでいます。
写真4