富山大学附属病院 消化器・腫瘍・総合外科(第二外科)

膵臓外科
膵臓外科
教室の紹介
富山大学での治療

膵臓外科

膵臓疾患に対する膵臓手術は年間100件以上行っています。
年間100件以上の膵臓手術は国内では限られた施設しか達成しておらず、北陸では当院のみです。
その実績から、通常では切除が困難である疾患でも、高度な技術と安全性をもって切除が可能かどうか症例ごとに検討しています。
紹介受診やセカンドオピニオンをご希望の方には、できるだけ早く受診していただけるよう、スタッフ一同で可能な限り調整しております。遠方から受診される方には、通院のご負担を軽減できるよう、検査日程をできるだけ集約したり、必要に応じて入院での検査を行うなどの調整を行っています。
膵臓疾患でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

当科では、膵臓がんおよびあらゆる膵腫瘍(膵のう胞性腫瘍や膵神経内分泌腫瘍など)、急性・慢性膵炎など手術治療を求めて受診される患者様に真摯に向き合い、最善を尽くすべくスタッフ一同診療にあたっています。当科の膵臓がんの治療成績はどこにも引けをとらないと自負しています。一方でそれに満足せず、患者さんにとってもっと良い治療法はないか、何が最善の治療かを日々探求しています。
膵臓がんは難治がんのひとつであり、手術が唯一の根本的な治療ですが、発見された時には進行し、「手が付けられない」ことがしばしばあります。また膵臓は腹腔内の臓器をやしなう大血管に接する体の深部に位置しており、それゆえ膵臓手術には高度な技術を要します。
安全性を徹底した膵臓・胆道手術
富山大学では、積極的かつ専門的な膵切除(膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、膵全摘、血管合併切除など)を行っています。
難易度の高い膵臓・胆道手術のなかでも、膵切除はとりわけ難しい手術でありますが、当教室教授藤井が開発した新しい膵空腸吻合法:Blumgart変法を導入することで、安全かつ確実な手術を行うことができています。 (Fujiiら、2014年論文化)
2019年以降、毎年100件を 超える膵切除を行なっています。 これは北陸4県で最多です。
新規胆管空腸吻合法:T吻合の開発
膵頭十二指腸切除術後の晩期合併症として、胆管空腸吻合部狭窄による胆管炎があります。これを予防するため、吻合径を拡張する新たな吻合方法:T吻合を開発しました。(Kimuraら、2023年論文化)T吻合を行ったグループと従来の吻合法を行ったグループを比較すると、T吻合を行ったグループで術後胆管炎の発症率が有意に減少しました。
執刀医交代制による安全性の確保
長時間に及ぶ手術では、複数の外科医が連携して担当する手術交代制を導入しています。交代制を導入しても合併症が増加しないことを示すデータもあり、当科においても検証を行った結果、主要合併症率の増加は認めていません。安全性を最優先に、エビデンスと実データに基づいた運用を行っています。
全国手術データベース(NCD)を活用した安全な手術への取り組み
膵頭十二指腸切除術は、膵がんや胆道がんに対して行われる高度で複雑な手術であり、患者さんの全身状態に応じた慎重な判断が重要です。
当教室では、日本全国の手術データを集積した National Clinical Database(NCD)を用いた研究を行い、手術後の重篤な合併症や生活機能(ADL)の低下を事前に予測する指標の有用性を示しました(木村ら,2025)。
当科では、こうした科学的根拠に基づく指標を術前評価に活用することで、手術のリスクをできる限り減らし、患者さん一人ひとりにとって最も適した治療方法を検討しています。
これにより、無理のない安全な手術の実施と、術後の生活の質を大切にした治療につなげることを目指しています。
最先端の膵がん治療
切除が不能と診断された膵臓がんであっても、希望をもって受診される患者様に寄り添い、私たちもあきらめずに治療に当たっています。初回診断時に切除不能と診断された膵がんに対し、抗癌剤治療や放射線治療を行い病勢がコントロールされた症例に対して行われる切除手術のことをコンバージョン手術と言います。
当教室センターでは、切除不能膵がんに対して化学療法や放射線治療などをうまく組み合わせ(集学的治療)、積極的にコンバージョン手術を目指した治療を行っています。コンバージョン手術を行うためにはいくつかの条件があり、膵がんに対しては手術だけでなく、化学療法や放射線治療などをうまく組み合わせ(集学的治療)、一般的には切除不能の膵がんの患者さんがコンバージョン手術可能となるのは約10%と言われていますが、当教室では約35%の患者さんがコンバージョン手術を施行しています。
手術だけに頼る方法よりも良好な成績をあげています。また、標準治療だけでなく以外にも、以下のような特殊な治療も行うことができ、多くの治療選択肢があります。
動脈合併切除を要する膵/胆道がん
膵癌・胆道癌が肝動脈に接触/浸潤している場合には化学療法と放射線療法を組み合わせた集学的治療を行った後に肝動脈合併切除再建を行い、根治切除術を行っています。
膵癌がSMA(上腸間膜動脈)に接触/浸潤している場合には化学療法と放射線療法を組み合わせた集学的治療を行った後にSMA周囲の神経叢を温存しつつ周囲の固い組織を鋭的に切除していくoffroad resectionの手技にて切除を行います。手術中に残す側のSMA周囲組織に癌の遺残が無いことを確認するために術中迅速病理評価を駆使しながら進めて切除を行います。まさに「道なき道を行く」手術です。
この手術方法にて切除された方の完全切除率は約9割、局所再発率は3%と局所の根治性も保たれており、全体の予後も良好な成績を維持しています。
門脈合併切除を要する膵がん
膵がん・胆管がんが門脈に浸潤している場合、同時に門脈を合併切除して吻合することでがんの根治を行います。しかし、門脈の切除の長さが3cmを超える場合、術後の吻合部狭窄、血栓形成の危険性があります。当センターでは門脈の切除の長さが3cmを超える場合、浅大腿静脈という血管グラフトを用いて門脈合併切除再建を行っています。(Shibuyaら、2023年論文化)
また、門脈合併切除を行う場合、門脈遮断時間の延長は腸管うっ血・肝血流低下を招き、術後合併症のリスクとなります。その対策として、アンスロン(ヘパリン固定化)カテーテルを用いた一時的門脈バイパスが用いられます。(中尾ら、1982)
当科では門脈合併切除を要するすべての症例において、アンスロンカテーテルによるバイパス下に門脈再建を行っております。これにより門脈遮断時間を気にせず、丁寧かつ安全な再建が可能となります。
ロボット支援膵臓手術(ダビンチ手術)
〜傷が小さく負担の軽い治療〜
広く大きく切除することだけが、常に最善の治療とは限りません。
近年では、切除不能膵がんに対して行われるコンバージョン手術のほかにも、病気の悪性度や進行度に応じた「必要十分な治療」の開発が進んでおり、ロボット支援下膵切除術(ロボット手術)はその代表的な治療法のひとつです。
これまで膵臓の手術では、たとえ病気が進行していない場合でも、進行がんと同様に上腹部から臍部まで大きく開腹する必要がありました。当教室では、病状・病態に応じてロボット手術を選択することで、おなかのキズを小さくし、患者様の身体への負担を最小限に抑える低侵襲手術に積極的に取り組んでいます。
さらに私たちは、体表の創部を小さくするだけでなく、切除する臓器そのものを可能な限り最小限にとどめることも重視しています。通常は膵臓とともに切除される脾臓を温存したり、半分近く切除されることの多い膵臓の切除範囲を約3分の1程度に抑えることで、将来的な免疫機能の低下や糖尿病発症のリスクをできる限り軽減することを目指しています。
富山大学では2020年、北陸地方で初めてダビンチを用いた膵切除術を導入しました。症例に応じて、膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、脾臓温存膵体尾部切除をロボットで行っています。これからも、根治性と低侵襲性の両立を追求し、患者様一人ひとりに最適な治療を提供してまいります。
膵がんに対する審査腹腔鏡と腹腔洗浄細胞診の意義
画像検査で転移が確認できない膵癌でも、腹腔内に微小ながん細胞が存在することがあります。当科では膵がんの全例で治療前に審査腹腔鏡を行い、腹腔洗浄細胞診により正確な進行度を評価しています(五十嵐ら、2024)。
この検査でがん細胞が検出される頻度は病状の進行に伴い増加しますが、陽性例でも化学療法により陰性化し、手術が可能となる患者さんがいることが報告されています(深澤ら、2023)。
これらの評価により不要な開腹手術を避けるとともに、根治切除を目指せる可能性を含め、患者さん一人ひとりに最適な治療方針の決定が可能になります。