富山大学附属病院 消化器・腫瘍・総合外科(第二外科)

大腸外科
大腸外科
教室概要
診療科

大腸外科

大腸がんについて:大腸外科領域の診療の特色
◉直腸癌に対して、ロボット支援下手術を導入、狭い骨盤内でもより巧緻な手術を行うことにより、直腸機能、肛門温存手術を積極的に行っています。
◉低侵襲の手術を目指し、大腸癌をはじめ多くの疾患で腹腔鏡下での手術を導入しています。
◉3D腹腔鏡システムやICG蛍光ナビゲーションによる先端技術を用いた腹腔鏡手術を行っています。
◉人工肛門管理の専門資格を持った皮膚・排泄ケア看護認定看護師にストーマケア外来を開設しています。
肛門温存を目指したロボット支援下直腸切除術
直腸と肛門は、お腹から見ると、狭く深い骨盤内に存在しています。さらに骨盤内には、重要な血管や神経(排尿・排便・性機能を調節する自律神経)が複雑に走行しています。直腸癌の手術では、「がんを治す」ため癌を含めた組織を完全に切除することと、「機能の温存」血管や神経、肛門の筋肉を傷つけずに残すという二つの要素をバランスよく両立することが求められます。癌を治すための手術では、癌とその周囲の正常な部分を含めて広く切除します。通常は直腸癌から2cmを目安とし肛門側の直腸を切除します。肛門側につなぎ合わすための直腸を残すことができれば、肛門の近くで腸と腸をつなぎ合わせる操作を、自動吻合器という手術器械を使って安全に行えるようになりました。またさらに肛門に近い直腸癌でも比較的早期癌の場合は、肛門括約筋(肛門を締める筋肉を部分的に切除したうえで腸と肛門をつなぎ合わせることも可能となりました。
当院でも 2018年6月に県内で最も早く、直腸癌に対してのロボット手術を導入しました。従来は、肛門周囲の筋肉の切除を必要とし、人工肛門の造設が不可避であった患者さんの一部で肛門に近い直腸癌でも安全に癌を切除し、腸をつなぎ合わせることが可能となりました。
大腸癌切除手術件数とロボット手術件数の年次推移
低位前方切除術(肛門温存手術)
直腸切断術(肛門が残らない)
多くの疾患で、低侵襲の腹腔鏡下手術を施行
小腸から大腸および肛門までを専門に大腸外科領域で担当しています。
手術対象となる主な疾患
大腸領域
  • 大腸癌、直腸癌
  • 急性虫垂炎、大腸憩室症、憩室炎
  • 結腸軸捻転 など
小腸領域
  • 小腸腫瘍(小腸GIST、消化管リンパ腫など)
  • 腸閉塞
  • クローン病 など
肛門領域
  • 骨盤臓器脱、直腸脱
その他
  • 後腹膜腫瘍
  • 婦人科、泌尿器科関連疾患 など
先端技術を用いた腹腔鏡手術
3D腹腔鏡システム
腹腔鏡を用いた手術では、カメラを通した画像を2次元モニターに描出するため、立体感の欠如した画像を見て手術を行う欠点があります。当科では、ロボット支援下手術を含め、大半の大腸領域の手術で3D腹腔鏡システムを用いています。
この3D腹腔鏡システムの導入により、腹腔鏡下大腸癌手術(結腸切除、直腸切除)の平均手術時間が、約50分短縮しています。
2Dと3D腹腔鏡システムによる手術時間の比較
蛍光ICGナビゲーション
蛍光物質であるICG(Indocyanine Greenインドシアニングリーン)を用いて、腸管血流の分布や、リンパ流などを体表面または体内から観察する方法がICGナビゲーションです。ICGは、人間の肉眼で直接的には見えませんが、赤外光観察システムという専用カメラを用いることで、可視化することが可能となります。
赤外光観察システムは、切除した腸管および吻合部の血流評価に利用します。血流不良な腸管を確認できることにより、術後の縫合不全の防止に有用です。
またのリンパ流を観察することで、手術中にリンパ管を介した癌の広がりを確認できる可能性があり、癌の転移リンパ節を含めた過不足のない腸管切除範囲の確認への応用が期待されています。
ストーマ外来
人工肛門は、ストーマとも呼ばれています。 直腸がんに罹る患者さんの増加に伴い、人工肛門を必要とする方も多くなってきています。そのような人工肛門をお持ちの患者さん(オストメイトと云います)の診療を行っているのがストーマ外来です。人工肛門管理の専門資格を持った皮膚・排泄ケア看護認定看護師が、それぞれの患者さんの人工肛門の状態に合わせたアドバイスやケアを行っています。当院で手術を行われた方はもちろん、ほかの施設で手術を行われた方も受診することが可能です。また腸管ストーマ(人工肛門)だけでなく、尿路系ストーマ(人工膀胱や尿管皮膚ろう)に関するトラブルや相談にも対応しています。